第1章 春は出会いの季節です。
次の日の合宿最終日。
朝から雨が降っていて、傍から見ていても皆はとても走りにくそうだった。
よりによって何故最終日に雨。
空を見上げ、どこにも見えるはずのないお天道様を恨めしく思う。
最終日なのでできる範囲で片付けを始めながら仕事を進めていると、昨日合宿をリタイアしたため私服の手嶋先輩が視界に入った。
傘をさし、反対の手にコンビニ袋のようなものを持ってどこかへ歩いていこうとしている。
どこへ行くつもりなのだろう。
怪我の具合も気になったため、私は先輩を追いかけることにした。
「手嶋先輩!」
私の声に気付いたらしい先輩が、ケガのせいでゆっくり進めていた足を止め、こちらを振り返る。
「…」
「大丈夫なんですか?そんなに歩いて……何か用事なら私が代わりにやってきますけど」
「ああ、いいんだ。小野田に渡してやりたい物があってさ。」
そう言って手嶋先輩は軽く手に持った袋を掲げる。
「小野田のバイクにつけてやりたいから、俺が行かねぇと。あいつ明らかに周回数落ちてるからさ。何か見てらんなくて。」
「そうですか……」
「、そんな顔しないでくれよ。」
「え…?」
「俺は大丈夫だからさ。お前がそんな顔するなって。」
「……………。」