第1章 春は出会いの季節です。
合宿3日目は、事実上のインターハイメンバーの選出が行われる日になった。
壮絶な1、2年生の勝負の末、先にゴールラインを割ったのは1年生の3人組だった。
その結果、3年生を除く残りのインターハイメンバーは1年生から選ばれることになった。
手嶋先輩と青八木先輩は、1年生の頃から田所先輩に教えを請い、厳しい練習を積んでいたそうだ。
そのため、やはり田所先輩との絆は深く、敗戦が決まった後は三人で涙を流していた。
それも当然だ。尊敬してやまない田所先輩と一緒に出られるインターハイは今回が最後。これを逃せばもう二度と巡ってくることはないチャンスだったのだ。
光の当たる場所にいることができる人の数は、常に決まっている。
だからこそ、そこにふさわしい実力をつけるため、皆日々頑張っているのだ。もちろん、誰が悪いという話ではない。
自分も運動部だったのだからそれくらいのことは知っているつもりだった。
より頑張った人が勝つわけではない。より実力のある人に席は用意される。
けれど、こういう事態になるとどうしても情が先行してしまい、冷静な思考を妨げる。
ゴール前の激しい競争は2年生を負傷させることに繋がり、結果二人は合宿をリタイアしてしまうこととなった。
2年生の気持ちを考えるとやりきれず、もらい泣きで少し滲んだ涙を拭いながらその日は部屋へと戻った。