第1章 春は出会いの季節です。
相手があることなのだから仕方ないとはいえ、想いが届かない瞬間を目の当たりにするのは精神的にこたえる。
ましてやそれは同じ部活仲間の二人の話。
今泉くんには、可愛い女の子がたくさん出てくるアイドル物のアニメなんかを今度はおすすめしてみようか。
二次元の女の子にハマってしまえば、失恋したときにも傷を癒やしてくれるかもしれない。
そんなことを考えながら自販機までの道を歩いていると、暗闇の中で背後から声をかけられた。
「?」
反射的に振り返ると、そこには今まで考えていた人物の顔が。
出来れば今は会いたくなかった。
「今泉くん……」
「自販機か?」
「あ、うん。」
「偶然だな、俺もだ。」
静かに私に笑いかける今泉くん。
何となく彼の顔が見られなくて視線を外していると、「どうかしたのか?」と尋ねられる。
「あ、ううん?!なんでもないよ?!」
「…………そうか。」
今泉くんは怪訝な表情ながらも、それ以上は追求してこなかった。
「眠れなかったのか?」
「あ、うんちょっとね…考え事してて。部屋に戻ったら今泉くんの貸してくれた音楽聴いて寝てみる。あれ本当にすぐ眠れるよね。心地よくて…」
「気に入ったのか?」
「うん!すごく。ありがとうね。」
お礼を言うと、今泉くんは柔らかく笑う。窓からさした月明かりが彼を照らして、とてもきれいに見えた。
本当に、整った顔立ちをしている。思わず見とれてしまった。