第1章 春は出会いの季節です。
ラブヒメのBlu-Rayへの期待に胸踊らせる小野田くんと別れ、自分も下校しようと昇降口までの廊下を歩いていた。
ポスターを作成することになったので、その道具やら資料やらを準備していたらそれなりに時間がかかってしまった。
登校時とは打って変わって、荷物が多い。
特にラブヒメに関しては小野田くんがたくさん布教用の資料をくれたので、両手いっぱいに荷物が増えている状態だ。
持って帰るのも一苦労だな…
そう思いながら歩いていると、何人かの女子とすれ違った。
「あ…来たよ今泉くん…!」
「ほんとだ、ほら頑張って!」
彼女達の交わす言葉を聞いて、今から告白でもするのかなと思い至る。
一応今まで15年以上女子をやってきているので、なんとなく雰囲気からも察することができた。
「あ、あの、今泉くんだよね。私……」
すれ違って私の背後に回った彼女達の前を、どうやら目当ての彼が通ったようである。
何事かを一生懸命話す女子に対する返答は一切ない。
不思議に思ったけれど、今自分が振り返るのも不自然なのでそのまま歩を進める。
すると次の瞬間。
私の真横を背の高い、涼やかな目元の男子生徒が通り抜けて行った。
一瞬だったけれど、端正な顔立ちなのはよく分かった。
私の方には目もくれず、そのまま前だけを見て歩いていく。
返事すら、しなかったのか………
名前、今泉くんて言ったかな