第1章 春は出会いの季節です。
幹から今泉くんの名前が出た瞬間、昨夜手嶋先輩と話したことが頭をよぎる。
今日、もうこれで何度目だろうか。
幹を見る度、今泉くんを見る度、思い出しては挙動不審になってしまう。
今泉くんの好きな人は、幹。
手嶋先輩は私が幹の名前を出したときに直接肯定はしなかったけど否定もしなかったので、きっとあれは無言の肯定だったのだろう。
隣の幹をチラリと盗み見て思う。
こんなに可愛いんだから、好きになるのも当たり前だよなあ。
可愛らしい顔から下に視線をずらしていくと、すぐに彼女の豊満なバストに行き着く。
そして尚も思う。
この世界は残酷であると!!!
顔も可愛いのにスタイルまで良いなんて、神様は本当に不公平だ。そのどちらかだけでも良いから私にも振り分けてほしかった。
今泉くんの気持ちは幹にあるとして。
じゃあ、反対はどうなのか。
幹とはまだ恋愛について話したことはなかったので、タイプも恋愛観も知らないままだった。
「…幹って今泉くんのことどう思ってるの?」
「え?」
言葉を発してからあまりにも直球すぎたことに気付いたけれど、一度相手に届いた言葉は取り戻そうとしても返らない。
勝手に口から滑り落ちた言葉は、私の脳内を通ってこなかったかのごとく安直なものだった。
幹の気持ちを確かめたいならもう少し聞き方もあるだろうに、自分の頭の悪さに嫌気が差す。