第1章 春は出会いの季節です。
合宿2日目も、みんなは1000キロ走破に向けてがむしゃらに走っていた。
昨日と同じように仕事をしながら、時々コースを回ってくる皆の様子を窺っては、頑張れと心の中で念じている間に今日もあっという間に終わってしまった。
「雑誌の取材?ええ!すごいね!」
練習後の女子部屋で幹から聞いたのは、インターハイ特集を組む自転車の雑誌からインタビューの申し入れが来ているとの話だった。
「うん。金城さんに特集記事の件を話したら、インタビューを受けるのは鳴子くんがいいんじゃないかって。でも本人に話をしたらしいんだけど、断られたみたい。」
「え?!なんで??」
目立つこと、派手なことが大好きなあの鳴子くんが。
普段なら目の色を変えて飛びつきそうな話題なのに。
「今は合宿に集中したいんだって。」
「へえ……そっか。」
やはり生半可な気持ちではこの1000キロ走破は成しえないということなのだろうか。
鳴子くんがそんな話を自らふいにするなどとは思いもしなかったので少し驚いた。
「でも、じゃあ誰がインタビュー受けるのかな?」
「やっぱり金城さんじゃないかな?同じ理由で1、2年生は今は特に余裕ないだろうし。」
私の質問に幹がそう答える。
その返答に大いに納得していると、彼女がそれに付け足した。
「今泉くんはインタビュー慣れしてるし、どうしても1年生に頼むなら今泉くんでもいいかもしれないけど。」
「インタビュー慣れ??」
「ほら、今泉くん過去の大会でもたくさん優勝してるから。その度にインタビューされてきてるからそつなくこなせるようになったって前言ってたよ。」
「わあ……すごい、王者の貫禄って感じだね。」