第1章 春は出会いの季節です。
「って元々アニ研志望だったろ。色々アニメの話してみたいって思ってたんだよな。」
「え?!手嶋先輩アニメ見るんですか?!」
「割といろんなジャンル見るぜ。話し相手としては申し分ないと思いたい。」
「そ、そんな…!早く言ってくださいよー!」
「なんとなく今まで言いそびれててな。ていうか小野田と、今泉のこと沼に引き入れようとしてんだろ。」
「な、何故それを…!」
「普段のお前ら見てれば分かるよ。そんで、それが結構成功してるのも知ってる。今泉って案外素直なやつだよな。」
「はい、本当に…。良い人に巡り会えたと思ってます…」
「なんだよそれ、彼氏かよ。」
テンポの良いツッコミが心地良い。
手嶋先輩と二人きりでこんなに深く話すのは初めてだけど、とても楽しかった。
「いやいや!恐れ多い。今泉くんのファンの子達に睨まれちゃいますよー。」
「ああ…あいつモテるしなあ。もっとも、今は一人の子しか見えてないみたいだけど?」
「それは穏やかじゃないですね…ファンの間で争いが起きてしまいそう…」
私は今泉くんに初めて会った日に、彼が女の子に声をかけられていたことや、レースのときに集まったファンの子達を思い出していた。
きっと私の預かり知らぬところでも、しょっちゅうああやって声をかけられているんだろう。人気者も楽じゃない。