第1章 春は出会いの季節です。
そう言って、また苦笑する。
そんな、なりたいって思う人がいないみたいな言い方をしなくてもいいのに。普段の言動から、手嶋先輩は結構自己評価が低いなと常々感じていた。
「そう言うはどうなんだ?どんなやつがタイプ?」
自分に水を向けられるとは思っていなかったので少し油断していた。
手嶋先輩からの質問に一拍おいて考える。
「タイプですか…………んー、なんだろう。改めて聞かれると難しいですね。」
「だろ?」
「……うーん、真っ直ぐな人、ですかね。」
「真っ直ぐ?」
「はい。自転車部のマネージャーになって、毎日皆の練習見て。ひとつのことに対して脇目もふらずに真剣に努力している姿は、本当ににかっこいいなって。真っ直ぐだなって思うんです。」
「……そうか。でもそれってさ。」
「?」
「俺達みんなタイプってことか?」
私の隣でいたずらっぽい笑顔を浮かべる手嶋先輩。
「ヘヘ、そうかもしれませんね。」
そんな先輩に、素直に思ったことを返す。どうも手嶋先輩の前だといつも以上に肩の力が抜けて本音が出る。
それもきっと手嶋先輩の人柄によるものだろう。
「おいおい、そこはツッコミいれてくれよー。」
「えー、だって本当にそう思ったから。」
二人でひとしきり笑ったあと、手嶋先輩がまた口を開く。