第1章 春は出会いの季節です。
「風呂上がりにここ通ったら、が大口開けて寝てるから冷えないか心配になってさ。かけるものそんなもんしか持ってなかったからあれだけど…」
「ええ!!大口?!!」
「はは、うそうそ。冗談だよ。」
「えー、手嶋先輩…!」
手嶋先輩が気にしてかけてくれたジャージのおかげで体はポカポカしている。もともと先輩はそういう人だけど、気持ちがとても嬉しかった。
ジャージを丁寧に畳んで先輩に手渡す。
「ありがとうございます、あったかかった。」
「ああ、良かったよ。日中はもう夏かよって思うくらい暑いけど、まだ朝晩は冷えるからなあ。女子は冷やすと良くないんだから気をつけろよ。」
「はい。あの、私どれくらい寝てました?」
「うーん、俺がここに来てからは10分くらいかな。」
「そうでしたか…ごめんなさい、練習後の貴重な時間を。手嶋先輩も早く寝ないと!今日すごく疲れたでしょ?」
「いいんだよ、俺がやりたくてやったことなんだから。気にしなくていいからな。」
そう言って手嶋先輩は笑う。
「手嶋先輩って本当に周りをよく見てて…配慮の人って感じですよね。」
「よせよ、何も出ないぞ?」
「別におだててるわけじゃないですよ?本当にそう思って…。あ、手嶋先輩好きな女の子のタイプ、手のかかる子だったりしません?」
「あー、そうだな…。あんまり意識したことなかったけどそうなのかもな?ちょっと抜けてて、俺の手を必要としてくれるやつの方が一人で何でもできるタイプよりは合ってるかな。」
「やっぱり…!手嶋先輩の彼女になる人は幸せですね。」
「なりたいって思ってくれる女子がいればいいんだけどな。」