第1章 春は出会いの季節です。
「しかし、そんなに惚けるということは…のタイプだったのか?そいつ…」
「ぷぷぷ、スカシがいじけとる、自分よりイケメンが現れたもんやから」
「う、うるせぇよ鳴子…!」
「タイプ………うーん、そういうのとはまた違う気がするけど…。なんていうか、キレイなものとか可愛いものを見るとさ。心が浄化されるというか…えーと…最適な言葉がここまで出かかってるのに出てこない」
「もしかして、あれかなさん…」
小野田くんの顔を見た瞬間、目当ての言葉がするりとこぼれ落ちた。
二人の声が重なる。
「「尊い!!」」
「あー、こういう時の小野田くんにはホンマ敵う気せぇへんわ…むっちゃ通じ合ってます感出すやん」
「あはは…同志だからね、僕達!!」
「でもほんとそれだ、尊い人だったね、小野田くん…!」
「うん。また会えたらいいね!」
小野田くんが満面の笑顔でそう言った直後。今度は今泉くんと鳴子くんの声が重なる。
「二度と会えなくていい!」
「二度と会えなくてええわ!」
声が重なり居心地が悪そうな二人を見て、小野田くんや手嶋先輩とひとしきり笑った後、金城さんからの号令がかかる。
最初から予定外のことが起こって驚いたけれど、ここからが本番だ。
気を引き締めて頑張らなければ。
「良い合宿に」
そう言った今泉くんの言葉を思い出す。
自分の両頬を軽く張ってから、私は集合の輪の中へと走り出した。