第1章 春は出会いの季節です。
クラスメイトが「また明日」とでも言うように。次に会えるのが当然とでも言うかのように、彼はまるきり名残惜しむ様子もなく走り去って行った。
連絡先を交換したわけでもないのに。
住んでいる県すらも違うのに。
普通なら、ここで別れればもう二度と会うことはないだろう。
でも何故だろう。不思議と彼の言う通り、私もまた真波くんに会える気がしていた。
次の約束や繋がりを持たないのに、本当に不思議な感覚だった。
何だか頬が熱い。真波くんに貰ったペットボトルを押し当てると幾分マシになるけど、それでも熱い。
まるでドラマのワンシーンかのような出会いに、その後も胸の鼓動がしばらく鳴り止まなかった。
イケメンは罪だなあ。
そう思いながら、真波くんの笑顔を思い描きながら。私はとぼとぼと小野田くんのいる坂の上まで歩き始めるのだった。