第1章 春は出会いの季節です。
鳴子くんと小野田くんのやりとりを見ていて思わず笑ってしまった。
迷わず携帯電話を取り出し、二人に差し出す。
「はい、これ私の連絡先。」
二人は嬉々として登録を始める。
そんな二人の様子を見て、今泉くんはため息をついている。
「小野田まで…。なんだか悪いな。」
「ん?なんで?同じ部活なんだし連絡先交換くらいするよね。今泉くんも後で教えてね!」
「あ、ああ……」
自分に水を向けられるとは思っていなかったのか、今泉くんは少し驚いたような顔をした。
「あ………もしかして女子には教えないようにしてたりする?それなら無理には聞かないけど」
「いや、そんなことねぇよ。のは聞いておきたい。」
「素直にちゃんの連絡先聞けてめっちゃ嬉しいです言うたればええやんなあー?なあ小野田くん?ほんまに可愛げのないやつやで。」
「うん!!僕すごい嬉しいよ!オタク友達第一号さんの連絡先!!」
「……鳴子、聞こえてるぞ。」
小野田くんから今泉くんに渡った私の携帯電話。今泉くんはあっという間に私の連絡先を登録し、私に電話を返してくる。
そして私の携帯電話には、新規で追加された登録が3件。友達というのは、あらためて数を数えるなんてことはそうそうないけれど、携帯電話に連絡先を登録して一覧に名前が増えることで、また新しい関係を築いたことを実感したりする。
何とはなしに登録した三人の連絡先を眺める。そこで気付いた。