第1章 春は出会いの季節です。
教室から場所を移し、春風が心地よく通り抜けるところに腰を落ち着け、皆でお弁当を広げる。購買で買ってきたらしい大量のパン(本当に大量で思わず二度見した)のうちのひとつをかじりながら、鳴子くんが口を開いた。
「さっきの話やけど。」
「?」
「友情、汗、涙、努力。ええなあ。めっちゃええやん、スポ根やん!ガチガチの運動部脳やん!」
「もうその話はいいよ鳴子くん!恥ずかしい!!」
「アニ研入ろうとするやつが部活における理想として挙げるワードとちゃうやろ、これ。」
「はは………それはそう思うけど。」
会話の途中で私もお弁当を口に運ぶけど、恥ずかしさからかあまり味がしない。
「…………決めたのか?」
今泉くんが静かに問う。
何を?と聞くほど、野暮ではない。
「……………うん。自分は部活に何を求めてるのかってところからね、考え直してみたらそこから少しずつ気持ちが固まって……」
「じゃあ、さんも自転車競技部に…!」
全国優勝を目指すようなチームに、こんな何も知らないズブの素人が入って良いものか、そこはまだ気になるけど。
でも巻島先輩がくれた言葉が自信になっていた。
「そんなに一生懸命になってくれるやつが仲間になれば、皆心強いだろうな。」
一歩踏み出してみたいと思えた。
熱くなる瞬間を、また感じたい。
そう強く思った。
何より、自転車が縁で出会えた皆を側で応援したいと思った。
「あの、なんにも知らないド素人ですけど………どうぞよろしくお願いします。」