第1章 春は出会いの季節です。
「俺も高校入る前は、高校は中学と違ってすごく自由なところなんだろうって思ってたぜ。」
でも違った。
そう呟いて、巻島先輩は歩を止めた。
「ゴチャゴチャ言うやつはいつでも、どこにでもいる。通う場所が変わったからって何もかもが劇的に変わるわけじゃない。大事なのは自分ショ。自分がどうしたいのか、どうなりたいのか、それにはどうするべきか。」
自身の入学当時のことを考えているのだろうか。前を見据えたまま、巻島先輩は続ける。
「俺は考えたぜ。自分のスタイルを貫くにはどうすればいいのかをな。だから、ももう一度よく考えてみればいいショ。自分のやりたいこと。」
「はい…………!」
私の相槌を合図に、巻島先輩が弾かれたようにこちらに顔を向けた。
少し頬が赤いような気もする。
「ちょ………ちょっと喋りすぎたっショ。柄にもねぇ……」
「いえ!!!すごく嬉しかったです…!」
最初は帰り道を同じくするのも戸惑われていたくらいだったのに。
巻島先輩も思うことがある話題だったためだろうか、親身になって話をしてくれたことは肌で感じた。
「ちょっと大げさっショ。そんな大したこと話してねぇし…」
「そんなことないですよ。私、高校入ってから人との縁に恵まれてる気がします。それも自転車関連の。」
「……………。」