第1章 春は出会いの季節です。
「う、うわあああああ、ご、ごめんなさい!!僕そんな…!泣かせるつもりじゃ!!!」
私の潤んだ瞳に気付いた彼は、自分のせいだと思いこみ、血相を変えて頭を下げる。
「あ、いや、違うのこっちこそごめん!!あなたのせいじゃないから!なんでこんなことになっちゃったのかなって…ちょっと悲しくなっただけ。」
「そ、そうですか……。本当に、残念ですよね…僕、高校に入ったらアニ研に入って友達を作って、皆でアキバに行くのが夢だったのに」
そう言うと、目の前の彼は視線を足元に落としてうなだれてしまった。
今少し話しただけだけれど、何となく分かる。彼はきっといい人だ。
自分の直感を信じ、私はひとつの思いつきを彼に提案してみることにした。
「ねぇ、名前は?私、4組の。」
「あ、4組?同じクラスだったんですね!ごめんなさい、僕まだ全然皆の顔覚えきれてなくて…」
「それは私も…今日まだ自己紹介の時間なかったもんね。」
「はい…僕は小野田坂道って言います。よろしくお願いします。」
「坂道くん…!珍しい名前だね!!」
「はは…よく言われます。逆境に強くなるようにって願いが込められてるらしくて。」
「へえ…!良い名前だね。よろしくね、小野田くん!」
「はい!」
「あのさ、同い年だし丁寧な言葉使わなくていいよ?」
「ああ、あー、うん!」
にっこり向けられた笑顔が眩しい。
少し躊躇うように視線を泳がせたあとに小野田くんは相槌を打ってくれた。
「はい」ではなくて、「うん」と。