第1章 春は出会いの季節です。
先輩達もこの結果には大はしゃぎ。
特に巻島先輩はレース序盤に出遅れた小野田くんが今泉くんや鳴子くんに追いつくわけがないというクールな立場を途中まで崩さなかったけれど、山岳での結果を受けて先輩の中で一番沸いていたように思う。
あまり大きな声を出したりしない、それこそいつもクールな先輩なのかと思っていたけど、どうやらそうではないのかもしれない。
小野田くんの走りを見つめる目は真剣そのもの。
幹のお兄さんが運転する車内で隣に座っていたけれど、とても声をかけられるような状態ではなかった。
自分より2つも年上のはずなのに、その横顔に「少年」なんて言葉を思い浮かべた自分に苦笑する。
「………何一人で笑ってるんだ?」
「わあ!!!」
「悪い、驚かせたか?」
レース後、一同で学校まで戻った後解散となった。
そのため私は今、レースの興奮醒めやらぬ中帰路につこうとしていたところである。
そこで、先程別れたばかりの、それもちょうど考えていた巻島先輩の声が背後から聞こえたので大げさに驚いてしまった。