第1章 春は出会いの季節です。
ウェルカムレースは死闘になった。
小野田くんはついこの前自転車を始めた人とは思えないほどの走りを見せ、今泉くんや鳴子君を押さえて山岳賞を奪取。
でも、そこで力尽きてしまいリタイアとなった。
本来この山岳賞とは、一番に山岳ステージを駆け上がった者に与えられるが、それは最後まできちんと走りきった場合に限られるそうだ。
小野田くんはリタイアしたけれど、皆その走りに驚かされた。熱くなった。 熱狂したと言ってもいい。全員固唾をのんで見守っていた。
だから、本来のレースではもらえないはずの山岳賞だけれど、「山岳は小野田が制した」と強く印象付ける形になった。
自転車は急に才能が開花する場合があると聞いてはいたものの、ここまでのことがそうそうあるのだろうかと考えてしまうくらい小野田くんの走りはすごかった。
山のてっぺんで今泉くんと競り合い、僅差でゴールする後姿を見たときは。思わず涙が出そうになった。