第1章 春は出会いの季節です。
二人が言い争いをする横で、先程話しそびれてしまったサングラスの先輩が声をかけてきてくれた。
「騒々しくてすまないな。俺は主将の金城だ。君が見学に来るには今日は最適な日だったかもしれない。」
「?」
どういうことだろう。
そう思って金城さんの顔を見つめていると、彼は私に柔らかく微笑み返した後に手を叩いて部員を集めた。
そこで示された今日の練習内容は……なんとレースだった。
ウェルカムレース、というらしい。
その名の通り、新入部員である1年生の対抗レース。
コースの全容の説明を受けただけでも倒れてしまいそうなくらい過酷な内容に私には思えた。
でも小野田くんは瞳を輝かせ、ワクワクしているようにさえ見える。
対して今泉くんと鳴子くんは………
まだバチバチにやり合っていた。
「このレースで決着つけたろうやないか!」
「望むところだ。俺の姿が見えなくなるくらいぶっちぎってお前に勝つ。それで黙らせてやるよ。」
二人の間に見えるはずのない火花が散るのが見える。
そんな二人の様子を見ながら、私は小野田くんと顔を見合わせ、こっそり苦笑するのだった。