第1章 春は出会いの季節です。
「あーもう!巻島さんもオッサンも、ちゃんに余計なこと言わんといてくださいよ!!」
今しがた部室にやってきたらしい鳴子くんが早速先輩達に抗議する。
その後すぐに輝いた視線をこちらに向け、抱きつかんばかりの勢いで私めがけて走ってくる。
「ホンマに来てくれたんやな、ワイのスイートハニー!!」
「…………誰が誰のスイートハニーだって?」
「い………今泉くん……」
いつの間にかやって来ていた今泉くんは私と鳴子くんの間に入り、長い腕を伸ばして鳴子くんの頭を押さえている。
鳴子くんの頭を掴む掌にやけに力を入れているように見えるのは気のせいだろうか。
「い、いてててて痛いわスカシ!!!なんやねん!!!」
「何じゃないだろう、部室でふざけた行動をするな。目に余るから止めただけだ。だいたいお前は普段からうるせえんだよ。」
「何をー?!」
「……また始まったっショ…本当にあいつらは馬が合わねぇなあ……」
巻島先輩が漏らした一言で、普段の彼らの様子が透けて見える気がした。
思った通り、二人の関係はあまり良好ではないらしい。