第1章 春は出会いの季節です。
小野田くんと訪れた部室には、もう先輩らしき人達が数人集まっていた。
ドアの開閉音に顔を上げた先輩のうちの一人が声をかけてくる。
「よお小野田!………?お、隣の女子はもしかして……」
「はい田所さん!この子が鳴子くんの言っていたさんです!」
「初めまして!今日、部活見学させてもらうことになりました。です。よろしくお願いします。」
最初に声をかけてきた大柄な先輩に続いて、サングラスの精悍な顔つきの先輩、そして緑色の長髪が印象的な先輩もこちらに寄ってきた。
「とうとう本当に連れてきたのかあ?鳴子がしつこくて申し訳なかったな。」
長髪の先輩が言う。
なんだかこの人が目の前に来た瞬間にふわりと良い香りがした気がする。
男の人でこんなに髪を伸ばすくらいだから、何かこだわりのシャンプーでも使って念入りに手入れしているのかもしれない。
髪も綺麗な緑色だ。散らしている赤のメッシュが引き立っている。とてもオシャレな人だと思った。
「アニ研志望なんショ?あんま鳴子に気ィ遣うことはねぇからな。」
「そうだそうだ。あいつは無視していいぞ!後輩のくせに人のことをオッサン呼ばわりしてくる無礼者だからな!!」
「あ、ありがとうございます……」
今泉くんと同じような声掛けをされて、つい少し笑ってしまった。
まだ一年生が入部してから日も浅いのに、鳴子くんには皆気安く軽口が叩けるようだ。それも彼自身が人に対して壁を作らないああいうキャラクターだからなのだろうなと思う。