第1章 春は出会いの季節です。
最後まで賑やかに、鳴子くんは自分の教室へ戻っていく。
それを見送ったすぐ後、また別の声が背後で響いた。
「。」
「あ、今泉く……」
振り返って彼の顔を確認した瞬間。
不機嫌なのが一瞬で見て取れ、思わず肩を震わせてしまった。
「なんだ今のは。鳴子と何を話してたんだ?」
「あ、えーと……鳴子くんが私を元気付けようと放課後部活見に来ないかって誘ってくれて…」
「…………」
今泉くんが私の返事を聞いて舌打ちをする。それを受けてまた私の体は強張る。
「鳴子のやつ、ベタベタさわりやがって………」
「え?」
「………いや、なんでもない。それより部活見に来るって、鳴子がまだしつこく勧誘してるのか。」
どうやら普段の部活の最中も鳴子くんは私の話をしているらしく、彼が個人的にマネージャーとして私を勧誘しているという話は今泉くんの耳にも入っていたらしい。
「しつこくって、いやそんなことないよ。さっきも純粋に私のこと心配してくれてたし……」
「アニ研のこと、うまくいってないのか?」
「なかなか思うようには行かないね…」
「…別に鳴子に気を遣う必要なんてないからな。」
「へ?」
「鳴子がマネージャーになれってうるさいからって、あんなにやりたがってたアニ研諦めても良いのかよってことだよ。」