第1章 春は出会いの季節です。
「そうだったんだ…」
「ごめんさん、僕……」
「あのね。私も同じこと話そうと思ってたんだ。」
「え…?」
今にも泣き出しそうな顔を上げて小野田くんは私の言葉を待っている。
「小野田くん、高校生活は一度しかないよ!絶対にやりたいこと、やったほうがいいよ!」
「さん………」
「アニ研のことが残念じゃないって言ったら嘘になるけど、でも小野田くんがやりたいと思える新しいことを見つけられたのは本当に良かったって思ってるから。」
「ありがとう、ありがとうさん……」
「や、やだ泣かないで小野田くん。その代わり、自転車部に入っても仲良くしてね!色々アニメのこと話そう!約束通り、アキバも行こう!」
「えええええ!!!!!」
先程の鳴子くんにも負けず劣らずな声量で、泣きそうになっていた小野田くんは一瞬でハイテンションへと持ち直す。
「ほ、ほんとに?!!もうこんなこと言ったら二度と口きいてもらえないかと……」
「そんなことしないよ。小野田くんは私にとって高校で初めてできたオタク友達だし!」
「…………!!」
私の返答で小野田くんはたちまち笑顔になる。周りにはふわふわとお花が飛んでいるようにさえ見えた。
「うん、絶対行こうアキバ!さん行ったことないって言ってたよね。どこから案内しようかな、やっぱり……」