第1章 春は出会いの季節です。
一つ前の発言の消え入りそうな声から一転。
側にいた私と小野田くんが思わず驚き声を出してしまいそうになるくらいの大声で彼は言い放った。
「ワイ、ガチでストライクやで小野田くん!!!」
鳴子くんは小野田くんの両腕を掴んでブンブン振り回している。
対して揺さぶられている小野田くんはすっとんきょうな声を出しながら目を白黒させていた。
この状況に驚いていたため、先程の鳴子くんの発言が2拍も3拍も遅れてようやく頭に入ってくる。
可愛い…………
ストライク………………?
今まであまり言われたことのなかったフレーズの為、理解するのに時間がかかっている。
その内に鳴子くんは私の方に向き直り、キラキラ輝いた瞳で話し始めた。
「改めて自己紹介や。ワイ、鳴子章吉いいます。関西からこっち引っ越してきたばかりなんや。向こうではロードで有名で、浪速のスピードマン言われとりました!!」
「ロード……」
「鳴子くんもね、自転車競技部に入るんだって。」
ああ、そうか。ロードバイクの「ロード」。
小野田くんの補足で理解する。
そしてまた今日も自転車関連の知り合いが増えたなと思う。
「ワイら、アキバでたまたま出会ってん。そこでワイ、小野田くんはロードの素質あるいうことに気付いたんや。」
「あ……」