第1章 春は出会いの季節です。
そして放課後。
他の生徒はすっかりいなくなった教室で、小野田くんに話を始めようとしたときだった。
「よっ!来たで小野田くーん!」
教室の出入り口で拳を高く掲げて小野田くんを呼ぶ関西弁の赤い髪の子。
小野田くんは彼のことを「鳴子くん」と呼んだ。
どうやらこの数日で小野田くんもクラス外の友達ができたらしい。
「あ、小野田くんもしかして先約あった?話は別に今日じゃなくてもいいから気にしないで…」
「あ、ううん。そうじゃないんだ…」
「初めましてー、ワイ鳴子章吉いいます。実はですね……」
ハツラツとした表情で、よく通る声を響かせながらズンズンと教室内に踏み入ってこちらへとやってくる鳴子くん。
しかし、ある程度の距離まで来て私とバッチリ目が合った瞬間に雷に打たれたかのようにそこで立ち止まり固まってしまった。
私の隣の小野田くんが心配そうに彼の顔を覗き込む。
「ど、どうしたの鳴子くん……?どこか痛い……?」
「お…………小野田くん……」
「?」
「聞いとらんで……こんな……」
「え?何、聞こえないよ鳴子くん」
「小野田くんの言うてた女子がこんな可愛え子なんて1ミリも聞いとらんかったわー!!!!!」