第1章 春は出会いの季節です。
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小野田くんと今泉くんのレースから数日が経過していた。
土日を挟んだこともあり、なかなか本格的な部員勧誘には行動を移せずにいた。
具体的行動は、まだ勧誘ポスターを掲示板に貼ったのみ。
それに対するリアクションは今の所まだなかった。
部員獲得に向けてこれからどう動くべきなのか考えると同時に、先日のレースのときに感じた現状への違和感は日に日に大きくなっていた。
たった数日だけれど、あの日から小野田くんがそれまでとは何か違う気がしていた。
柔和な瞳の奥に闘志を宿したような。
出会うべき物に出会ったとでも言うような。
彼は本当は、自転車を本気でやってみたくなったんじゃないか。
気が優しい小野田くんのことだから、自分がそれを言い出すと私が一人になってしまうと思って気持ちに蓋をし、遠慮しているのではないか。
私から話をしてみるべきなのかもしれない。
そう考えるようになっていた。
アニ研のことは残念だけど。
一人で一から始めるのも、またいいじゃないか。
自転車を始めた小野田くんの応援もしつつ、マイペースに活動していけば。
自分の中でそう結論付け、小野田くんに話をするために放課後約束を取り付けた。