第1章 春は出会いの季節です。
改めて面と向かって自己紹介すると何だか照れる。
「か……よろしくな。」
小野田くんが負けたことで今泉くんがアニ研に入ることは無くなったわけだし、クラスも違うし。
学校での接点はほとんどなくて何をよろしくするのかもよくわからないけど、それでも彼がそう言ってくれたことが嬉しかった。
「声、かけといたからな。知り合いのアニメ好きのやつらに。」
去り際に今思い出したという感じで、恩着せがましくもなく今泉くんがかけてくれた言葉に私はまた笑顔がこぼれる。
ありがとう。
残念だな、同じクラスだったら良かったのに。
明日から、廊下ですれ違えば挨拶する程度の関係に戻ることに少し寂しさを感じながら、私は彼にありがとうと声をかけ、手を振った。