第1章 春は出会いの季節です。
放課後。
レースのスタート地点に私は幹や小野田くんと一緒にいた。
幹から話を聞いたところ、小野田くんの勝負の相手は自転車競技部に入部予定の幹の幼馴染だということだった。
スタート地点には幹が声をかけた女子生徒が何人も集まり賑わっている。
その理由を、私は今しがたやってきた対戦相手の顔を確認して理解した。
「あ…!今泉くん!」
私の声に反応して顔を上げた今泉くんは、視線をこちらによこして「ああ」と呟く。
幹の幼馴染とは今泉くんのことだったらしい。
「昨日の。」
「うん、昨日はありがとうね。」
「昨日、名前も言わずに帰ったな。」
「あ?ごめん、やっぱり名前聞かれた気がしたの空耳じゃなかったんだ。」
「違ぇよ…」
「あ、そういえばこの勝負に小野田くんが勝ったらアニ研に入ってくれるんだって?!」
そう言うと、彼は不敵に笑う。
「ああ、負けたら入る。約束したからな。まあ万が一にも負けることはないが。」
「えー、そんなあ……」