第3章 錯覚
『帰ったんですか……?』
「ああ、ついさっきな」
音楽室に行って、中の様子を見たら誰もいなかった。
だから顧問の宇髄先生のとこに行って聞いてみたら、炭治郎くんたちは帰ったと言う。
『そうですか……』
多分私がいた場所から音楽室に行く時に、入れ違いになったんだろう。
「竈門に用があったのか?」
『用って言うか、体育館掃除しなきゃいけなくて…』
宇髄先生は、なるほどと頷きながら言った。
炭治郎くんがいないなら、もうここには用はない。
早く戻って炭治郎くんに会おう。
『あの、その…じゃあ…』
なんて言って去ればいいのか分からなくて、帰りづらい。
投げやりに帰ろうとしたら、「帰るのか?」と宇髄先生に止められた。
『はい。炭治郎くんがいるかもしれないので、一応』
私がそう答えると、宇髄先生は少し考えこんだ。
「、お前コンクールに作品出さないか?」
『えっ』
珍しく黙り込んでいたから、何を言い出すのかと思ったら作品をコンクールに出すかだった。
そんな事急に言われても困ると言う気持ちが率直な感想。
「すぐに答えださなくてもいいから、考えててくれ」
『…はあ、分かりました』
そう言って私は音楽室を後にした。