第3章 錯覚
するとその蛇はスルスルと木から降りて、私の方へと向かって来た。
『え、えっ!?』
蛇だしやっぱり怖いから逃げようかと思ったけど、身体が上手いように動かせなかった。
蛇は私の足下をスルスルと上がって来た途端バランスを崩して転倒した。
そして身体に絡みついた。
『(な、何·····!?)』
あまりの出来事に私は困惑する。
蛇は私の腕から巻きついて胸を強調するような絡みかたをして来て、恥ずかしいと思って抵抗しようとするけど上手く力が出なかった。
伊黒先生なんでいないの、なんで近くにいないのってすごく思う。
『こらっ·····!!』
人間の言葉分かるか分からないけど、叱りつけてもなんの反応もしない。
蛇の顔が私の顔に近づいて、心臓が凄く早い速さで鼓動してるのが分かる。
チロチロと出ている蛇の舌が私の頬に当たった。
『やっ、ぁ·····っ』
早く私から離れてって、心の中でたくさん願っていた。
「鏑丸」
この蛇の名前だろうか、ピクっと反応して絡みついていた蛇が私の身体から離れた。
蛇はスルスルと後ろの方に向かっていて、私も後ろを向いて視線を向けるとそこには伊黒先生がいた。
いつからいたんだろう。見られていたかな?と思って、見られていたら恥ずかしいし何事もなかったかのように『この子の名前鏑丸って言うんですね』と声を掛けた。
平気そうな感じを出しているけど、心臓はまだまだドキドキしていた。