第3章 錯覚
それから何も話さなくて、私から口を開いた。
『先生、その、ほうきってどこにありますか……?』
目的のほうきがどこにあるか冨岡先生に聞いた。
「教官室にある。…今からするのか?」
そう言って冨岡先生は歩きはじめたから、私は冨岡先生の後を急いでついて行った。
『…はい。あ、炭治郎くんたちは、部活で遅くなるって……』
「そうか」
『先生は、教官室に?』
「ああ」
『…そうなんですね』
「……」
『……』
先生の返事に少し、悲しくなった。
何か素っ気ない感じ。
でも冨岡先生って、クールで冷静沈着って感じで無感情ぽい人だ。
悲しくならなくてよかったのにって、少し後悔した。
けど何かもっと話してくれるかと思った。好きな人とはたくさん話したいって気持ちになるじゃん…?
冨岡先生は、私の事を好きだと思っていた。
でも最近冨岡先生はそんな素振りを見せない。
伊之助くんから言われた冨岡先生が私の事を「獲物を狙っているような目をしている」って、それってよく注意されるから目を付けられているだけかもしれない。
やっぱり、私の自意識過剰だったのかな。
思い込み、勘違い……。
最初は好きとか有り得ないと思っていたけど、いつの間にか冨岡先生に期待していた。