第3章 錯覚
なんで隠れているんだろう……
そう思いながら、身を縮ませる。
冨岡先生と先輩の話が終わるまで待っていよう。
はあ……と無意識に少し大きなため息がこぼれた。
炭治郎くん早く来ないかな…。
そんなことを考えながら、ぼー…と校舎の方を見た。
「」
ふとした瞬間に自分の名前を呼ばれた。
呼ばれた方を見ると、冨岡先生が立っていた。
『あ……』
まさか見つかるとは思っていなかった。
「そんな所で何しているんだ」
『あ、いや…ほうき、どこにあるのかなって探してて、先生に…』
先生に聞こうとしていたんです、そう言おうとしたけど出来なかった。
さっきの先輩の姿があった。
──冨岡先生、あの人と何話していたんだろう……
先輩の後ろ姿を見ながらそう思った。
2人が何していたって別にいいのに。関係ないのに、私は気になった。
そう思っていると
「…宇髄はいいのか」
『えっ……?』
急に冨岡先生がそう言ったから驚いた。
「絵画を描いているんだろう」
あ、美術…絵のことか……。と、ホッと少し安心した。
『最近…美術室行ってないので、大丈夫です…』
「そうか」
と、冨岡先生は一言だけ返した。
冨岡先生が宇髄先生の名前を出すから、一瞬だけあの日の事を思い出してしまった。
だいぶ日が過ぎて忘れていたのに。