第3章 錯覚
──待って、こんなの恥ずかしすぎる…っ
背後からの冨岡先生の圧倒的存在感。
冨岡先生と練習できているのって正直嬉しいのか、嫌なのか分からない。
前だったら冨岡先生が嫌でしたくないのに、今じゃ断りもしない。
それより冨岡先生の手って大きい。それに、しっかりしている。
ドキドキでどうにかなりそう。
「左足と右足を2回繰り返すんだ」
『は、はい……』
それから冨岡先生に教えてもらって、進む。
最後のくるっとまわった瞬間に目が合ったのは心臓が止まりそうになった。
でも本当は炭治郎くんとしたいな、と心の奥で思っている。
チラッと何度か炭治郎くんを見よう何度か探す。
「集中しろ」
そう言われたって、どうすればいいのか分からない。出来ない。
ただ頭の中が真っ白。
私は本当にどうかしている。
身体中が熱い。
先生の手がギュッと私の手をさらに握った。
この夏の暑さのせいか分からないけど、クラクラする。