第3章 錯覚
休み時間残り3分くらいに、他のクラスも来た。
『えー……合同?』
他のクラスと合同はあまりないけど、なんかめんどくさい。
そう思っていると休み時間が終わって、また号令をかける。
「座っていいぞ」
次もまたサッカーかな、と思ったけど違ったようだ。
「この時間は体育祭に向けて練習をする」
「練習って何をですか?」
誰かは分からないけど、男子生徒が言った。
体育祭の練習するのって早いなあ、と思ったけどもう7月。そろそろ練習する時期かと、しみじみ感じた。
「フォークダンスだ」
冨岡先生がそう言った途端に「えぇぇーー!!」とザワザワ騒ぎ始めた。私も声には出してないけど、びっくりした。
フォークダンス……小中学校でやった事ないけど、何をするかは知っている。男女が手を合わせて踊るやつだ。
普通は高校生活最後の3年生とかするんじゃないの?
私は率直にそう思ったけど、あまり気にしない。
「でも人数足りなく無いですか?」
女子の誰かが言った。
たしかに、女子の人数が多くて男子が足りない。
女子の質問に冨岡先生は答えた。
「何人か先生に入ってもらって調整をする」
「冨岡先生もですか!」
あぁ、とだけ言って頷いた冨岡先生。
『えっ…』
女子は「きゃあああー!」ってまた騒いでいるけど、私は驚きを隠せなかった。
先生達も混ざるんだ…
──じゃあ私も冨岡先生と一緒に……
そう考えたら顔が熱くなった。
熱くなったのに気付いて、ブンブンと頭を振る。
──冨岡先生が入るからってなんで喜んでるの
炭治郎くんと踊れるなんて……とか思うより先に、冨岡先生のことがまた浮かんだ。
でも冨岡先生が、自分以外の女子と手を合わせて踊るのは少し嫌だった。