第3章 錯覚
「イチ、ニィ、サン、シィ、ゴォ、ロク、シチ、ハチ……」
体育委員の掛け声に合わせて準備体操をする。
思い込みかもしれないけど、遠くから冨岡先生が私の事見てる気がする。
こっち見てるのかな…と思っていたら冨岡先生は、そこから動いてわざわざ後ろの方にいる私の横に歩いてきた。
体育の授業の並び方は席順と同じ。席替えの運が悪いのか良いのか分からないけど、私の席は最終列の1番後ろ。
いつも前のところにいるのに、どうしてここに来るんだろう。
サッカーするの楽しくて好きだから張り切って声を出して準備体操をしていたのに、掛け声が小さくなった。
先生が横に来られると体操に集中出来なくてドキドキする。
数十秒経つと冨岡先生は前の方に戻った。
──何だったんだ……
そう思いながら準備体操が終わると、集合をして冨岡先生の話を聞く。
「両者怪我がないように。それと……
と竈門と我妻は残れ」
冨岡先生に私と炭治郎くん善逸くんの3人が名前を呼ばれた。
「え!なんで俺呼ばれないといけないの!?何もやってないのにさ!」
善逸くんが冨岡先生に大きな声で言っているのに対して、炭治郎くんが「やっていただろう…」と控えめに言った。
みんなは善逸くんの言葉を無視して、バレーの人はネットを立てる準備を、サッカーの人はグラウンドに向かった。
冨岡先生に名前呼ばれたけど、私何もしてないから残らない。
どうせさっきうるさかったからその説教だろう、と私はグラウンドに向かう。