第9章 変わろう
特に影山とは中学の頃からの付き合いだ。
協力プレイを苦手としていた彼が仲間のために自分が変わろうと努力しているのだから、支えたいと思うのも当然だろう。
「変わろう、みんなで」
まだ夏は始まったばかりだ。
「そういえば花菜さん、あの人とはもう話せたんですか?」
「あの人?」
「梟谷のセッターです」
「あぁ、うん!」
影山の問いかけに明るい声で頷いた。
前回の遠征が終わってからというものの、影山はやけに京治のことを気にしているようだが何かあったのだろうか。
「試合が始まる前に少しだけだけ。私も京治くんも仕事があったから長くは話せなかったけど」
「そうですか」
影山はまだ何か言いたげな顔をしている。
言葉を探して選んでいるようにも見えた。
「聞きたいことが…あるんですけど」
「なに?」
「赤葦さんとはただの幼なじみなんですよね?」
「うん。そうだけど─」
花菜の答えに影山はほっと息を吐いた。
悩んだり安堵したり、こんなに感情の起伏が分かりやすい影山も珍しい。いつも仏頂面な彼だが今日はなんだか素直な気がする。
だから油断していたのだ。彼が発する次の言葉に。
「この間 偶然街で及川さんに会いました」
「…!」
及川の名前に過剰に反応してしまったことを、すぐに後悔する。
影山の観察眼はとても鋭い。動揺を見せた花菜に影山はすかさず身を乗り出した。
「及川さんと何かあったんすか?」
「な、何も無いよ」
「嘘だ。ほんとに何もないって言うならちゃんと俺の目見て言ってください」