第10章 幼馴染の肩書き
「例え花菜さんが及川さんを好きだったとしても、俺は諦めるつもりないです。むしろ まだまだこれからだと思ってます。そんな簡単に捨てられる程度の想いなら、ここまで本気になってない」
影山の意外な一面に京治は正直驚いた。
どうやら影山の想いも生半可なものではないらしい。ライバルは二人だ。いずれも強力な男たち。
─ 幼馴染
その肩書きだけで自分はなんとか花菜の傍にいる。そうでもしてつなぎ止めなければ、影山や及川には勝てないと思った。
培ってきた時間は俺よりも濃いだろう。自分が知らない数年間を彼らは花菜と一緒に過ごしていたのだから。
「簡単に捨てられないのは俺も同じだな…」
願って願って 運命のように漸く巡って訪れたチャンスなのに、みすみす手放すものか。
相手が何人だろうとどれだけハイスペックだろうと、花菜の心がもう誰かに傾いていようと、今更忘れられる恋じゃない。
「言っときますけど赤葦さん相手でも容赦したりしないんで」
それじゃあ、と言い残して影山は元の体育館へと戻っていった。
影山と別れたあと京治も木兎たちの待つ第3体育館に戻った。ついさっきまでここに花菜が居たのだと思うと不思議な感じがする。
好きな人と同じ場所にいられる奇跡は京治が1番よく知っている。この奇跡が続いているうちに、自分も何か行動を起こさなければ。
自主練後 スマホを開いた京治は画面の中で花菜の名前を探す。おやすみと短い文章を打ち込んでから、小さなため息を吐いた。