第9章 変わろう
ペナルティを終えた選手たちにドリンクを手渡しながら、花菜は先程の試合記録をノートにまとめていた。
前回の遠征からノートは変わり、既に二冊目に突入している。このままいけば合宿中には三冊目に入るだろう。
「よし!」
課題は山ほど残っているが、出だしは上々だ。
ノートを閉じて顔を上げると タオル片手に気難しい表情をしている影山が目に入った。
「飛雄」
「! 花菜さん…」
おつかれさま、と声をかけつつ花菜は影山にドリンクを渡す。影山はお礼を言いながら差し出されたそれを受け取った。
「さっきの試合、飛雄のトスが前とは違うことに日向はもう気づいてた。そして日向自身も前とは明らかに何かが違ってる。2人だけじゃなくて、他のみんなも」
「…はい」
影山も気づいているはずだ。
だからこそ、この合宿中にどうにかして日向との連携の成功率を上げなければならない事にも。
「ねぇ飛雄、喧嘩もいいけど仲直りも大事だよ。"どうするべきか"なんて答えはもう出てるんじゃないの?」
「…」
今のままではダメだと思ったから努力する道を選んだのだ。
日向も影山も、他のチームメイトたちも。その先にある可能性を掴むために必死に手を伸ばしている。
「みんな期待してるんだよ」
烏野の変人一年コンビに。
落としていた視線を花菜に向け、影山はボトルを強く握る。彼の中で何か覚悟が決まったようだ。
「ありがとうございます。いつも… 花菜さんには背中を押してもらってばっかりです」
「当たり前じゃない。選手たちを支えるのがマネージャーの仕事だもん」