第9章 変わろう
花菜は嘘をつくとき必ず目をそらす癖がある。
あまりに分かりやすいので単細胞の影山でもすぐに見破ることが出来るのだ。
「答えてください」
「っ、」
影山の威圧に花菜はとうとう観念して渋々口を開いた。
「私が風邪をひいて寝込んでたときに徹先輩が看病に来てくれて… それを思い出してただけ」
「及川さんが看病に…?」
それを聞いた影山は心の中で後悔した。
花菜が風邪を引いて早退したあの日、影山も部活終わりに彼女の見舞いに行こうか迷ったのだ。
けれど 花菜のことだから家まで押しかけたら逆に気を使わせてしまうと思い、直前で出向くのをやめた。
自分が悩んでいたその間に 及川は花菜の元へ足を運んでいたというのか。
「くそ。また先越された…」
だが落ち込むのはまだ早い。
今日から一週間、花菜の側にいられるのは及川ではなくて自分である。そして敵は、及川の他にもいるのだから。
─ 赤葦京治
花菜はただの幼なじみだと言うが、向こうはどうだ?
幼い頃から彼女の隣にいたのなら花菜の魅力に惹き込まれていてもおかしくない。否、恐らく彼は花菜に好意を抱いているだろう。
「飛雄!次、試合だよ」
「─ はい」
負ける訳にはいかない。いつまでも花菜に支えて貰ってばかりではいられない。
日中のゲームを一通り終えた夜。それぞれが自主練に励む中、影山は日向のいる体育館へ足を向けた。