第2章 はじまりの夏
影山が初めて花菜と出会ったのは中学の時だ。
中1の部活見学で男バレを見に行ったとき、偶然隣のコートで練習していた女子バレー部の中で花菜を見かけた。
コートの中で楽しそうに笑う花菜の笑顔と、驚くほど綺麗なフォームに見惚れたのを今でも鮮明に覚えている。
初めて彼女と話したのは、女バレと合同で行われた新入部員指導のときだった。指導の2年生の中に花菜がいて、影山が自分から話しかけたのだ。
自ら話しかけにいこうと思った女子など、花菜が初めてだった。否、恐らく彼女だけ。
それ以来 部活終わりにちょくちょくアドバイスをもらったりと、少しずつ花菜との距離は縮まっていった。
どんな時も笑顔を絶やさずに真っ直ぐ前を進んでいくその強さに、無意識のうちに惹かれていたのだろう。
あの日からずっと、影山の目は花菜だけを追いかけている。
しかし花菜は恋愛感情に疎いために影山の想いに気づけるほど鋭敏ではない。
今だって、こんな風にただまっすぐな笑顔を浮かべて影山の心を乱すだけだ。
「花菜さん。今日からもよろしくお願いします」
負けない。
次は絶対 青城に─ 及川さんに勝つ。
そう心に誓って影山はバッと頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いします」
影山の覚悟に花菜は笑顔で頷いた。