第2章 はじまりの夏
キーンコーン カーンコーン
4限終わりのチャイムが鳴ると、クラスメイトは各々お昼ご飯に向かって動き出す。購買に行く男子生徒や固まってお弁当を開く女子たち。
そんな中、花菜は席を動くこともなく黙々とノートにペンを走らせていた。
「うーん…」
やはり青城は及川と岩泉のコンビが強すぎる。
何か強烈な打開策でもあればいいのだが。
「花菜~」
「わっ!」
「そんな驚くことないでしょー。なになに、今度は何書いてるの?」
背後から覗きこんできたのは同じクラスの工藤柚。女子バスケットボールのエースをつとめる女の子だ。
彼女とは2年連続同じクラスの仲で、唯一無二の親友である。
「昨日の試合で気づいたことをノートにまとめてるんだよ」
「へぇ、さすが花菜。抜かりないわねー」
最後の一文字を書き終えてから花菜は「よし!」とノートを閉じて、横に掛かっていたお弁当を机に置いた。
「私も中学まではプレーする側だったから 相手チームの戦略とか穴とか、少しだけど気づけることがあるの」
「確かに外から見て初めて気づくことって意外と多いかも」
花菜と向き合うように座り、柚も続いてお弁当を広げた。
「記憶が新しいうちにこうやってノートにまとめておけば、何か選手たちの役に立つかもって思って」
少し恥ずかしそうに微笑んだ花菜の肩を柚は力いっぱいバシバシと叩く。
「花菜っ、あなた本当にいい子すぎる!」
「へ?」
「はぁ…… 私、男子に生まれてたら花菜みたいな女の子と付き合いたいな」
「なに言ってるの。だいたい柚には彼氏がいるでしょ」
柚の彼氏はイケメンで有名の男バスの2年生。去年から付き合っており、もうすぐ8ヶ月になるそうだ。
呆れ顔で箸を進める花菜に柚は、ははーんと目を細めた。