第7章 フクロウの夜明け
「ちょっと。何か相談したいなら下手くそな例え話やめて直球で来なよ」
花菜に断られたショックが地味に心に刺さっているのもあり、及川の口調はいつもに増して刺々しい。
影山は顎に添えていた手を下ろして悩みの源を及川に語りだした。
「今までボールを見ずに打っていた速攻を、日向が自分の意思で打ちたいって言い出しました」
「へぇー 出来たらすごいじゃん。やれば?」
「そんな簡単に言わないで下さい。日向には技術なんてないんですよ!」
「だから俺の言う通りにだけ動いてろっての?まるで独裁者だね」
スパイカーの可能性を潰して自分の思い通り駒のように扱う。本当にそれを、セッターと呼べるのか。
ニヤリと口角をあげて及川は言う。
「お前は考えたの?チビちゃんが欲しいトスに100パーセント答えているか。答える努力をしたのか」
何か思い当たることがあるのか、及川の言葉に影山は小さく俯いた。
「現状がベストだと思い込んで守りに入るとは随分ビビりだね」
及川の言葉は続く。
「勘違いするな。攻撃の主導権を握っているのはお前じゃなくチビちゃんだ」
その言い分が最もだと感じたからか─ 片手を上げてビシッと指差す及川に、影山は黙りこくってしまった。
「それを理解できないならお前は独裁の王様に逆戻りだね」
ふん、と腕を下ろして及川は言った。
実際 及川は影山の実力を認めている。そしてその影山が、自分の嫌ういわゆる"天才"の一員だということも。
高校に上がり烏野へ行ってから彼は確かに変わった。それがチームメイトや日向たちのおかげなのだろうということも、見ていれば分かる。
それでも今のままでは、影山が及川に勝ることはないだろう。