第7章 フクロウの夜明け
烏野が宮城へ戻った翌日──。
毎週月曜日 それは青葉城西男子バレー部の週に一度のオフである。青城バレー部主将・及川徹はこの日、甥っ子の猛の付き添いでちびっこバレーボール教室へ足を運んでいた。
平凡なオフ そうなるはずであった。
「及川さん!?」
この声の主に遭遇してしまうまでは。
「お願いします。話を聞いてください」
そう言って、柄にもなく頭を下げたのは及川の中学時代の後輩である影山だった。
「なんでわざわざ敵の話聞いてやんなきゃいけないのさ」
及川は気に食わぬ顔で言い返し、くるっと影山に背を向けて聞く耳も持たない。
それもそうだ。只でさえ顔を会わせたくない相手に相談に乗ってくれと頼まれたのだから。
しかし影山も諦めず、結果 影山の押しに負けた及川が "飛雄 及川さんに頭が上がらないの図" を代償に、とうとう話を聞くことになった。
「で、何? 俺忙しいんだよね」
「好きなコに遊び断られたから暇だってゆったじゃん!」
「猛!ちょっと黙ってなさい!」
「えー、来るときなんで断られたんだろうって」
「黙ってなさいって言ってんのぉ!」
甥っ子とそんなやり取りをしながら、及川はむっと顔をしかめる。
よりにもよって、影山の前でそんなことを言ったら相手までバレてしまうではないか。
はぁー…と重い溜め息をつきながら、及川は頭を掻いた。
猛の言う"好きなコ"というのは無論花菜のことである。
昨晩、東京から宮城へ戻ってきたであろう花菜に及川は明日にでも会えないか、と連絡を入れたのだが「用事がある」と断られてしまったのだ。
猛に文句を吐く及川に 影山はあの、と口を開く。
「もし大会が近いのに、えっと… 岩泉さんが無茶な攻撃をやるって言い出したら……」