第7章 フクロウの夜明け
───────
─────
「はい皆さん、お疲れさまでした」
「「「したーーッ!」」」
2日間の東京遠征を無事に終え、烏野は宮城へと戻ってきた。昼頃に東京を出たというのに、辺りはすっかり暗くなっている。
バスを降りたところで武田から明日の部活はオフだと伝えられた。体育館に点検作業が入るそうだ。
「ここのところ休みなしでしたので、ゆっくり休んでください」
武田の笑顔を最後に、本日はその場で解散となり花菜たちマネージャーも武田と烏養に一言お礼を言ってから、学校の門を出た。
駅までの道をゆっくり歩きながら花菜はガサガサと鞄を漁る。しかし、そこにあるはずの物が見当たらず花菜はピタリと足を止めた。
ノートがない。さっき荷物を置いた時に落としたのかもしれない。
長いポニーテールをサッと揺らして、花菜の足は迷うことなく学校へと引き返した。花菜にとってあのノートは青春のすべてと言っても過言ではない。
そのくらい大切で花菜の中では大金同等に価値のあるものなのだ。
学校付近まで辿り着いたとき、ちょうど門の方からトボトボと歩いてくる影山の姿を見つけた。
「飛雄」
花菜が声をかけると影山ははっと肩を揺らして地面を見つめていた顔を静かにあげる。
その頬には誰かに殴られた跡が残っており、この短時間で何があったのだと花菜は慌てて影山に駆け寄った。
「それ、どうしたの!?」
「俺と日向が言い合いしてるところを田中さんに殴られました」
「田中に?」
どうしてそんなことを… いや、田中は余程のことがない限り無意味に誰かを殴ったりする人ではない。ましてや影山と日向の喧嘩なんて日常茶飯事のことだ。
きっと、何かわけがあったのだろう。