第7章 フクロウの夜明け
「日向と影山くんがぎくしゃくし始めたの気のせいじゃない… ですよね」
「うん」
仁花の言葉に清水と花菜は揃って頷く。
「でも日向と影山だけじゃない。日向と東峰がぶつかってから、全員に緊張が走ってる」
清水の言う通り、いつもの活気の中にどことなく違う空気が流れているように見える。
日向の言葉に影響されて他の選手たちも闘争心を感じ始めたのかもしれない。
そのまま烏野は音駒の勢いに押され、18-25で試合はまたも音駒の勝利に終わった。
「皆さんはここにいるチームの中で一番弱いですね」
コートから出た選手たちに向けて武田は笑顔で言い放った。
そんな正論に言い返すことも出来ず、選手たちはチーンと肩を落としたが、武田はさらに後を続ける。
「どのチームも公式戦で当たったならとても厄介な相手。彼らをただの敵と見るのか、それとも技を吸収すべき師と見るのか。君たちが弱いということは伸びしろがあるということ。こんな楽しみなことはないでしょう!」
「「「!」」」
そんな思いがけない武田の一言に、選手たちの顔つきが変わったようだった。
「あざしたーッ!」
「「「したーッ!!」」」
武田の言葉に烏養はぐっと親指を立てた。
「今なんか先生みたいで頼もしかったぜ。ありがとな」
「あぁ僕、一応教師ですけども…」
弱い分、改善すべきところはたくさんある。だけどそれは強くなるための一歩にも繋がる。
今日の残り数試合 コートの外から出来ることはひとつ。
本日最終戦、梟谷との試合が終わる頃には花菜のノートはびっしりと黒で埋め尽くされていた。