第7章 フクロウの夜明け
「っ、日向!?」
どうしてここで日向が飛び出してきたのだ。 これは明らかに、東峰のボールである。
しかし日向には花菜の声も届いていない。ただ夢中にボールだけを見ているのだ。
「危ない!」
そう花菜が叫んだ時にはもう、東峰と日向が空中でドンッとぶつかって同時に床にボールが落ちた音がした。
一体 何が起こったのだ。
「あ、あ"ーーッ だ、だ」
「す、すみません!!ついボールだけ見てて!すみません!大丈夫ですか!?」
「お、俺は無傷だよ」
ペコペコと土下座をしながら謝る日向を、東峰は怒るどころか優しく宥めていた。
「おい気を付けろよー」
「どうしたって翔陽が吹っ飛ぶんだからな」
呆れながら言う田中と西谷に続いて花菜もほっと胸を撫で下ろす。
とりあえず、どちらにも怪我がなくて良かった。
それにしても 東峰のボールに突っ込んでいくなど、日向はどれだけ集中していたのだろう。
「ちゃんと前見ろボケェ!なんのための声かけだ!」
「ボケェ!日向ボケェ!」
烏養と影山に散々言われて日向もどうやら反省した様子だ。
しかし日向はここから更なる高みへと飛ぼうとしていた。
「なぁ影山」
「あ?」
「ギュンの方の速攻…… おれ、目瞑んのやめる」
─ 日向が目を瞑らない?
カァーッと烏の舞う音が聞こえた気がした。
驚いているのは花菜だけではなく、コーチや他の選手たちも同じだった。皆の注目を浴びる中で、日向はまっすぐ言い放つ。
「今のままじゃだめだ。おれが打たせてもらう速攻じゃ駄目なんだ」
「それが出来なかったから普通の速攻を覚えたんだろ。お前が何考えてんのか知らねぇけど、話ならあとで聞いてやる。でも今すぐお前がそれをやるっつーんなら、ミスると分かってる奴にトス上げるつもりはねぇ」
日向と影山、ふたりの会話に花菜は小さく俯いた。