第7章 フクロウの夜明け
─ 東京遠征2日目
今日の一発目は、これまでに烏野が1セットも取ったことのない音駒が相手だ。遅れてきた日向と影山にとっては久々の音駒戦になる。
音駒… やはり、あのミドルブロッカーが気になるところだ。
「くっそすっげー!」
「ドンマイ リエーフ、惜しかったぞ」
「はい!」
試合開始から数分、はやくもリエーフが日向の速攻に追い付いてきていた。
心なしか、日向も動揺したように見える。このまま何事もなく進めばいいのだけれど。
それから更に数分後 花菜の祈りは叶わず、日向の速攻はついにリエーフによって止められてしまった。
「よっしゃーっ!」
「と、止められた… あの速攻がこんなにはやく!?」
「前から音駒はあの速攻への対処が優れてるからなぁ。加えてあの新入りミドルブロッカーのタッパ+反応の速さがすげぇ」
日向に追い付くほどの速さと、あの長い腕。スパイクを打つ身からしたら相当なプレッシャーだろう。
影山の案で普通の速攻に切り替えたものの、それもすぐに向こうに見切られてしまい堪らず烏野がタイムアウトをとった。
「まぁ落ち着け。最初から速攻はがっちり警戒されてんだ。とりあえず音駒相手には東峰、田中のレフト中心で攻めてけ」
「「はい/しゃあ!」」
日向の速攻が使えない─ 本当にこのままで全国を相手に戦っていけるのだろうか。
ノートから目を離して花菜はちらっと烏養の方を見る。恐らく烏養も同じことを思っているのだろう。その表情は険しげだ。
─ ピーッ!!
再び激しいラリーが始まる。
「上がった!影山ナイス!」
「ナイス飛雄!」
コートの外から花菜も応援に励んだ。
向こうの攻撃をギリギリで影山が拾い、澤村がトスをあげる。
「オーライ ラスト頼む!すまん、ちょい短い!」
「旭!」
「ラストー!」
「おう!」
よし… 行ける!と、東峰が跳んだその瞬間 隣からとび出てきた影に花菜は思わず目を見開いた。