第7章 フクロウの夜明け
「あの時、お母さんを亡くして落ち込んでいた私に京治くんがバレーを勧めてくれたおかげだよ。だからありがとう」
「花菜…」
今こうして花菜と京治の再会が叶ったのも、バレーの存在があったからだ。
バレーボールが私たちを繋いでくれたのだろう。
「けどちょっと不思議な感じ。最後に見た京治くんは私とあんまり身長も変わらなかったのに」
「中学の3年間で相当伸びたからかな」
「隣に立ったら見上げないと顔見えないよ」
「驚いた?」
「うん。それに、かっこよくなった!」
「っ…」
京治の頬が紅を帯びる。花菜は相変わらず無邪気な笑顔を浮かべたままだ。
「花菜は変わらないな」
「え?」
それはもしかすると、あの頃から全く成長してないということだろうか。
「私だって身長伸びたんだよ!そりゃあ京治くんには全然届かないけど」
慌てて弁解する花菜に京治の口元はふっと緩む。
「そういうところ」
「どういうところ?」
「花菜は知らなくていいよ」
「そんなこと言われても気になるよ」
なんて 他愛もない言い合いをする。
そのあと数分ほど粘ってみたものの、花菜が京治からその答えを聞き出すことは出来なかった。
結局最後まで彼の言うそういうところがどんなところだったかは分からなかったけれど、今はこうして もう一度話せただけで十分だ。
「あのさ」
「?」
「もうひとつ聞いてもいい?」
「うん」
急に改まってどうしたのだろう。
花菜が京治の言葉を待っていると、少し間を置いて京治は静かに口を開いた。