第6章 夏風の誘い
「お疲れ様でしたー!」
「「「お疲れっしたーーッ!」」」
音駒と生川のラストゲームが終わり、選手たちはそれぞれ切り上げて体育館を出ていく。
烏野の荷物をまとめて花菜もコートを離れた。
体育館の出口へ向かう途中で梟谷の選手たちとすれ違う。無意識に視線を向けていると、先頭にいた京治と目が合った。
花菜の姿に気づいた京治はうんと小さく首を振る。それは恐らく、外で落ち合おうという合図だろう。
京治に答えるように花菜も小さく頷いた。
「今の人、花菜先輩の知り合いですか?」
花菜の少し後ろを歩いていた日向が汗を拭いながら問いかける。
そういえば、昼に体育館で京治と再会した時はまだ日向と影山は到着していなかったのだ。
「昔 東京に住んでた時の幼馴染なの」
「そ、そうなんですか!?」
「幼馴染…」
すげぇ!とはしゃぐ日向の横で影山は少し驚いた表情を見せたあと、立ち止まって梟谷の方を振り向く。
「あの人 梟谷のセッター、でしたよね」
「うん」
「……負けません」
また対抗心を燃やしているのだろうか。
セッターと聞くとすぐに誰構わず反応するのは影山の悪いクセだ。音駒の研磨の時もそうだったように。
「ライバル視するのはいいけど、あんまり相手を困らせちゃだめだよ」
「いや、そうじゃなくて俺は─」
「花菜先輩っ!」
影山が何かを言い切る前に、仁花の声がそれを遮った。
「荷物は私が運んでおきますので!先輩は先にあがってください!」
「そんな!私も一緒に片付けてから行くよ」
「花菜ちゃん、私たちは大丈夫だから梟谷のセッターさんのところへ行ってあげて」
「き、潔子先輩まで…」
ふたつの笑顔が花菜を照らす。
明日は今日の分までもっと働こう。
そう誓い、今日は清水と仁花の言葉に甘えて花菜は早めに上がらせてもらうことにした。