第6章 夏風の誘い
とは言ってもやはり、この二人の到着は烏野にとってすごく心強いことだ。
ここからが烏野の本当の見せ場になる。
ピッ、ピッピーーッ!!
得点板の数字が21-25を示して笛の音が試合終了を知らせた。
森然VS烏野、勝者は烏野高校だ。
「フライング1周ーっ」
「「「うぃーー!」」」
相手チームがペナルティをこなすのを見て花菜は胸を撫で下ろした。
9セット目にしてようやくの初勝利だ。
「腹へったーッ」
なんて、コートを出るときになんとも西谷らしい声が聞こえてきた。
日向と影山の速攻には相手も相当翻弄されていた。
実際 あんな神業を目の前で繰り広げられたら、混乱してまともにボールなんて見えなってしまう。
二人の存在が烏野にとってどれだけ大きな戦力になっているのか。
日向と影山がコートに入ることで他のメンバーの士気も上がるのだ。
でも……
手に持っていたノートをパラパラと捲って、花菜はあるページで手を止めた。
そこには今日の試合の詳細がびっしり記されており相手校の特徴、武器なども明確に記録されている。
細かく並んだ文字たちを見つめて花菜はどこか難しい顔をしていた。
やはり… 追い付いてきている。
日向と影山の速攻は確かに絶大な威力と効果を発揮していた。
しかし、あの速攻を使えば使うほど、それに反応しようと相手の動きも速くなっていた。
25点目を決めたとき、日向の打ったボールがほんの少しだけ相手のブロックに触れたのが見えた。
おそらく、日向自身も気づいていたのだと思う。