第6章 夏風の誘い
花菜の行動の一部始終を見ていた冴子はその思いやりに強く心を打たれたらしく、「私が烏野まで連れてってやんよ」と言って車で花菜を送ってくれたのだ。
あの車内で初めて田中(弟)を目にしたときは、第一印象が強烈すぎてびっくりしたものだ。
けれど実際に話してみてすぐに分かった。見かけによらず、田中弟もとても良い人なのだと。
そんなわけで実をいうと、花菜と田中はお互いが高校生活の中で1番最初に出来た友達なのである。
と、そんな昔話はさておき─
ともかく今は冴子を信じて日向と影山の到着を待つしかない。
花菜がぎゅっと拳に力を込めたのとほぼ同時に、体育館の扉がガチャン!と開かれた。
「お~まだやってんじゃん!間に合ったねー上出来!」
この声はもしや…
「「姐さん!/冴子さん!」」
西谷と花菜の声が重なった。
なんてベストタイミングだ。そうとう飛ばして来たのだろう。さすがは冴子さんだ。
ペナルティのフライングを終えてはぁはぁと息を切らしながら、待ちわびた主役の登場に田中も、
「無事でよかったぜ……」
と声を漏らした。
「主役は遅れて登場ってか?腹立つわァ」
「おぉ…!」
黒尾や木兎、他校の注目を浴びる中でいよいよ日向と影山が体育館に足を踏み入れた。
烏野メンバーたちの顔には、待ってましたと言わんばかりの 期待に満ちた笑みが浮かぶ。
「気合いは… もう十分そうだね」
二人とも遅刻理由が赤点の補習なのに、何故か妙にかっこつけている。
影山のセッター魂と書かれたTシャツもとても気になるところではあるが。